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法面保護工の種類と概要

斜面崩壊・災害の形態

法面保護工の種類を紹介する前に、まず日本ではどのような斜面災害が発生しているのかを知る必要があります。なぜなら、災害の形態・種類に応じて対策すべき内容が異なるからです。日本は世界的に見ても平地が少ない国土です。そのため、山間部を通る道路も多いですし、山の斜面を切り拓き、道路や住宅地を造成している場所も多いです。それにより土砂災害や落石被害が発生しやすい地形になっています。

土砂災害、土砂崩壊(表層崩壊)

日本国内で最も多く発生していると考えられる災害が土砂災害・土砂崩壊(表層崩壊)です。近年では、梅雨時期や台風の影響により、集中豪雨や線状降水帯が発生し、毎年多くの土砂災害が発生しています。令和5年12月には、奈良県下北山村で災害が発生し、車2台が巻き込まれ、1名の方が亡くなるという災害も発生しました。この場所は、令和5年5月に一度災害が発生しており、その復旧工事に取り掛かる予定になっていました。その前に二次災害が発生してしまったことになります。

深層崩壊

土砂災害の一種にはなりますが、かなり深い場所(岩盤部分)で崩壊が発生した場合を深層崩壊と呼びます。前述の表層崩壊に比べると、発生頻度はかなり少ない災害ですが、この規模の災害が発生した場合、現在の技術で止めることは困難となります。

 

 

 

 

 

 

落石

落石被害についても、多く聞かれると思います。斜面上の転石が、何かしらの要因で不安定になることで発生します。落石の多くは、そもそも斜面上に不安定な状態で存在しており、倒木による影響や、大雨などで転石周辺の土砂が流されることで発生することが多いですが、地震動による発生も考えられます。

災害の種類・形態に応じた対策

今回、簡単な例を挙げましたが、他にも土石流や地すべりのような災害の種類もあります。斜面崩壊・災害の形態・種類によって、より最適な対策方法を検討・実施しないといけません。対策方法として、多く発生している土砂災害にも落石にも、待受け対策と発生源対策という考えがあります。

待受け対策

言葉の通り、発生した崩壊土砂や落石を法面の下で待受ける(受け止める)もので、災害自体の発生は許容することになります。対策工の規模としては、通常は崩壊土砂や落石を法面の下方一か所で受け止めるため、比較的小規模で安価なものになりますが、大規模災害が想定される場合には、待受け対策工自体が大規模なものとなるため、発生源対策との経済比較を行うことになります。

発生源対策

待受け対策に対して、災害の発生そのものを止めようというものになります。災害そのものを止めないといけないため、土砂災害であれば法面全体を覆うような対策を行い、落石であれば転石を動かないように止める対策を行います。災害の規模にもよりますが、待受け対策と比べると対策工の規模が大規模になりがちで高価になる傾向にあります。

法面保護工の種類と概要:待受け対策

次に、待受け対策とは具体的にどのような対策なのかをご紹介します。

いくつか種類がありますので、その一部をご紹介します。

待受け擁壁工

擁壁工はおそらく見たことが無いという方は少ないかと思います。都市部ではなかなか見ませんが、少し田舎の方に行くだけでもあちらこちらで目にすると思います。昔から対策されている一般的な対策工になります。擁壁工の種類にもよりますが、待受け擁壁は、発生した崩壊土砂を受け止める構造になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待受け防護柵工(杭タイプ)

防護柵工も、山道を走っているとよく見かけるようになったと思います。構造的には、土砂崩壊を受け止めるタイプと、落石を受け止めるタイプ、両方に対応したタイプがあります。道路や住宅際に設置した場合には、土砂や落石を際で受け止めないといけないため、靭性があり衝撃に強い構造になっている特長があります。写真の左側のように、斜面の途中に設置される場合もあります。

 

 

 

 

 

待受け防護柵工(斜面設置タイプ)

杭タイプと異なるのは、法面(斜面)の途中に設置されている点です。法面の途中に設置されている理由は、杭タイプと異なり伸びの発生する構造のものが多く、その分道路や住宅から距離を取らないといけないためです。網が伸びたりすることで、衝撃を吸収する構造になっていますので、高エネルギーにも対応している特長があります。

 

 

 

 

 

 

落石対策工(ポケット式)

ポケット式の落石防護網で、斜面上方で発生した落石を網の中(ポケットの中)に受け止める構造になっています。一般的なものは、あまり大きな石は受け止めることが出来ませんが、近年では高エネルギーなものまで受け止められる構造のものが出てきています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

法面保護工の種類と概要:発生源対策

次に、発生源対策の具体的な対策工なのかをご紹介します。いくつか種類がありますので、その一部をご紹介します。

法枠工

法枠工もおそらく見たことが無いという方は少ないかと思います。昔から対策されている一般的な対策工になります。基本的には、表層土砂の流出の発生を防ぐためのものですが、ロックボルト工やグラウンドアンカー工との併用によって比較的深い土砂崩壊対策にも適用します。

 

 

 

 

 

 

 

 

モルタル吹付工、簡易法枠工

モルタル吹付工も、山道を走るとよく見かけると思います。地表面に出ている岩盤の風化を防ぐために施工されます。簡易法枠工は、言葉の通り法枠工を簡易にしたものになります。そのため、法枠工よりも土砂災害に対する防止効果は弱く、表層土砂の浸食防止を目的に対策されることが多いです。

 

 

 

 

 

地山補強土工

地山補強土工というと、前述の法枠工も含め、非常に幅広い対策工があります。その一部をご紹介したいと思います。まずは樹木などの自然を残したまま施工可能な対策工を参考としてご紹介します。法枠工に比べると補強効果が落ちるものが多いですが、景観を大きく変えないという点と狭隘な場所(狭い場所)でも施工が可能という特長を持っています。主に土砂災害の発生を防ぎます。

 

 

 

 

 

次に、切土などをした整形斜面を主な対象としている対策工をご紹介します。主に樹木などが無い斜面を対象としていますが、樹木を残しながら対策をした事例もあります。こちらも、主に土砂災害の発生を防ぎます。

 

 

 

 

 

 

落石対策工

落石対策工の発生源対策も幅広い工法がありますが、ここではその一部をご紹介します。まずは石の動きそのものを止める対策工をご紹介します。多くは不安定な石を網やロープで覆い、周辺をアンカーで止めるような対策工になります。それにより斜面上にある浮石や転石などの初動を止めることが可能になります。

 

 

 

 

 

 

次に、斜面を覆うようにして落石を防ぐ対策工をご紹介します。こちらは、待受対策でご紹介したポケット式の落石防護網の、ポケットが無いタイプというイメージになります。ポケット式と異なり、網が斜面に張り付いたように設置されています。

 

 

 

 

 

 

まとめ

ここまで、斜面崩壊の形態や種類から法面保護工の種類までご紹介させて頂きました。ここでご紹介させて頂いた内容はほんの一部で、災害対策は非常に奥が深いです。もしかすると、みなさんの身近にもこのような対策がされている斜面があるかもしれません。

以前、斜面対策工を行っていたにもかかわらず斜面崩壊が発生しました、と報道されているのを見たことがあります。ただ、その斜面対策工は落石や風化防止を目的とした対策工でした。土砂崩壊を防ぐ対策工ではないのですから崩れる可能性はあります。

近年では想定を超える大雨が降ることもあり、土砂災害を防ぐ対策工をしていても災害が発生してしまうことがあります。今回ご紹介したように、災害が起こっても、道路や住宅に影響を与えないようにするものもあります。

こちらのコラムを参考に、身近にある対策工が何を目的に対策されているのかを知る機会になればと思います。

情報引用先(出典)

奈良県公式ホームページ:国道 169 号(下北山村)の崩土事故の対応状況(令和 5 年 12 月 23 日)

(Microsoft Word – \211\357\214\251\215\200\226\332.docx) (pref.nara.jp)

国土交通省ホームページ:深層崩壊

砂防:深層崩壊 – 国土交通省 (mlit.go.jp)

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