目次
1.工法の概要
平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、家屋の倒壊等により多数の尊い命が奪われ、また六甲山系においては600箇所近い山崩れや落石被害が発生しました。
この阪神・淡路大震災を契機として、兵庫県では、地震等による土砂災害の軽減を目的として、地震時における設計法を取り入れた新しい治山工法として、「ロープネット・ロックボルト併用工法(RR工法)」を開発しました。
また愛知県では、東海地震、東南海地震など愛知県の南方にあるプレート境界面で発生する海溝型地震の発生が想定されており、大規模地震に対する有効な治山工法の確立が望まれていました。そこで兵庫県での内陸型地震に対する検討結果に海溝型地震に対する検討結果を加えてRR工法の開発が進められました。
RR工法の特徴としては、まずは大規模な地震に対して高い補強効果が確認されていることですが、それ以外にも法枠と鉄筋挿入工を併用した従来工法に比べて安価であること、また、樹木の伐採を少なく施工できることから、植生のある自然斜面において森林が保全できる等「環境保護」や「景観の保全」にも配慮できる点が挙げられます。さらに、過去にRR工法が施工された斜面では、度重なる豪雨を経験したにもかかわらず安定が保たれており、豪雨に対する斜面崩壊対策工法としても一定の効果を確認できています。
(兵庫県南部地震による山腹崩壊(兵庫県提供))
2.RR工法の特徴
RR工法の基本構造は、地表面を格子状に覆うロープネット、地山に挿入・打設されるロックボルト、ロープネットとロックボルトを連結する支圧板からなっており、これらが相互の動きを補完しながら斜面の安定化を図ります。
(1)RR工法の要求性能
RR工法は、ロックボルトを斜面直角方向に打設し、その頭部を支圧板とロープネットで連結することにより斜面安定を図るもので、以下の3つの要求性能を有するものとします。
①豪雨、地震時において、斜面の変形および破壊状態に対応して各部材が効果を発揮することにより、変形抑制する機能を有する構造であること。
②各構造部材は、防食に対しても十分に配慮すること。
③局所破壊*に至ってもロープネットが破断せず、ロックボルトが引き抜けず、斜面移動土塊が下流部に流出しないこと。
(*地盤の中規模な破壊形態の定義。局所的な崩落を含む地盤沈下、のり尻隆起などの残留変形を伴う破壊状態をいう)
(2)コスト縮減
RR工法は法枠と鉄筋挿入工を併用した従来工法と比べて2割程度安価です。
(3)環境・景観に配慮
RR工法は、ロックボルト・支圧板・ロープネットで構成され、従来工法と比較して直径も細く、柔軟なワイヤーロープ構造物であることから、既存樹木のある斜面で施工する場合でも樹木の伐採を少なくすることができます。そのため植生のある自然斜面においても森林が保全できるなど、斜面の安定性向上とともに「環境保護」や「景観の保全」にも配慮できる工法です。
ロープネット・ロックボルト併用工法の概要図
ロープネット・ロックボルト併用工法の構造概要
3.耐震効果の検討
地震による自然斜面の崩壊のメカニズムを研究、耐震効果の検証をするため、振動台模型実験による実験、現地試験、各種土質試験等を実施しました。
ロープネット・ロックボルト併用工法の開発手順
振動台模型実験 (独)防災科学研究所
対策斜面 無対策斜面
振動台模型実験 (独)港湾空港研究所
4.設計手法の特徴
RR工法の設計では、新たに提案する変形量予測式によって想定される地震動に対する地盤の変形量を求め、この変形量から斜面の破壊程度を予測し、本工法の適用性を判定します。
RR工法では、振動台模型実験や動的な数値解析などから、地震時の地盤変形量について新たな予測式を提案するとともに、地震時の地盤変形量と破壊の程度の関連付けを行いました。
したがってRR工法の設計とは、対策箇所で将来想定される最大級の地震動に対する斜面の変形量を予測式で求め、この予測変形量が局所破壊以内(斜面の要求性能)であるかどうかによって本工法の適用性を判定するというものです。
変形量の予想例図
上図に示す例では、設計対象地点での想定地震動が0.5Gの場合には、斜面に亀裂が発生し変形量が50mm程度であるが局所破壊には至っていないため、本工法を施せば斜面の要求性能を満足します。これに対して、想定地震動が0.6Gと予想される箇所では局所破壊状態以上の損傷となることから、本工法を施工しても要求性能を満足できません。従って、斜面を安定化させる工法を別途検討する必要があることになります。
5.ロープネット・ロックボルト併用工法研究の紹介 (http://rr-kouhou.com/)
○設立:平成21年5月
○研究会の目的:「ロープネット・ロックボルト併用工法」の理解を深めるとともに、設計や施工に関する調査・研究活動を行い、より確実で実用性の高い工法として発展させること
○活動内容
・設計手法を普及するための活動
講演会(各県への普及活動)の開催
砂防地すべり学会等での発表
各種イベント(六甲の災害展等)でのPR
・設計手法・施工法に関する調査・研究
・維持管理に関する調査・研究
○研究会の組織および会員(令和6年1月現在)
6.関連リンク
〇兵庫県WEBサイト内の関連リンク
治山課:https://web.pref.hyogo.lg.jp/org/nk15/chisankarink.html
RR工法の紹介:https://web.pref.hyogo.lg.jp/kok10/af20_000000011.html
RR工法のマニュアル等のDL:https://web.pref.hyogo.lg.jp/nk15/shinrindobokushiyousyo.html
RR工法の設計ソフトのDL:https://web.pref.hyogo.lg.jp/nk15/rrheiyoukouhou.html
〇六甲の災害展WEBサイト内の関連リンク
六甲の災害展:https://rokkosan-saigaiten.jp/
六甲の災害展WEBサイト内より事例紹介1:https://rokkosan-saigaiten.jp/newsinfo/#post-1105
六甲の災害展WEBサイト内より事例紹介2:https://rokkosan-saigaiten.jp/2024/09?post_type=topics
〇愛知県WEBサイト内の関連リンク
RR工法の紹介:https://www.pref.aichi.jp/soshiki/chita-nourin/0000066481.html
〇「ロープネット・ロックボルト併用工法研究会」のWEBサイト:http://rr-kouhou.com
〇ロープネット・ロックボルト併用工法関連動画(YouTube)1:https://www.youtube.com/watch?v=WN8MFYP0QXo
〇ロープネット・ロックボルト併用工法関連動画(YouTube)2:https://www.youtube.com/watch?v=qkYyC4lnHTU